【大阪市浪速区】通天閣本通商店街で起きた火災で延焼の損害を受けた出火元のビルの隣のお店「楽しい屋」が1月末で閉業しました
2025年1月21日に新世界の通天閣本通商店街で起きた火災で、出火元のビルの隣で営業していた着物レンタル店の「楽しい屋」が延焼による損害を受け、2025年1月末日をもって賃借契約の終了に伴い、閉業となりました。
新世界で20年かけて築き上げた事業で、店主の崔さんの存続させたいという思いにもかかわらず、突然の火災の延焼によって終了せざるを得なくなりました。
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建物の屋根が燃え落ちた様子(写真提供:崔様)
崔さんによると、火災が起きた場合は自動解約となる賃借契約となっていたといい、また火災保険に加入していなかったこともあり、お店の再建を諦めることになったといいます。
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着物や浴衣、帯などが燃え、さらに水浸しに(写真提供:崔様)
1階が店舗、奥にはキッチンやバスルーム、台所もあり、2階のスペースは、写真スタジオ、着物などの在庫を保管するための倉庫、崔さんの仕事の事務所とプライベートを兼ねた書斎としても使用していたため、仕事の書類や思い出の品々も保管していたそうです。着物の点数は1,000着ほどあり、さらに読書が趣味だという崔さんは、韓国に行くたびに買い集めてきた1,000冊にものぼる韓国の本を所蔵。1階の店舗では、グッピーを100匹以上飼っていました。隣のビルで火災が起きた時にはお店のスタッフも崔さんも不在にしていたことから、お店の中に入れたのは3日後となり、息絶えていたグッピーたちとの再会に、崔さんは涙が止まらなかったといいます。
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火災の延焼の惨状を物語っています(写真提供:崔様)
崔さんは韓国の釜山出身。韓国ドラマ「冬のソナタ」が日本で流行した時代に日本に移住。その後、20年前に新世界のエリアで訪日観光客向けに宿泊を提供するサービスの事業などを開始し、訪日旅行客の需要を受けて、着物、着付け、メイク、ヘアセットのサービスの提供も徐々に行うように。宿泊業から徐々に事業の転換を図り、着物のレンタルショップの事業を確立させて約7年前にこの場所で「楽しい屋」を開業しました。
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書や骨董品の惨状(写真提供:崔様)
コロナ禍で訪日観光客が来れなくなり、その間の3年間はお店を閉めましたが、毎月の賃料を払い続けて事業を維持したのは、この地で長年、培ってきた近隣の商店街の人々とのつながりを大切に思っていたことと、長年にわたって築いてきた事業に、大きなやりがいと喜びを感じてきたから。お客様が笑顔で喜ぶ様子が嬉しくて、図書館で何冊も本を借りて、独学でヘアセットの腕を上げ、1点ものの着物を求めて大阪のさまざまなお店やフリーマーケットを回って着物を新調したり、買い替えたりし、着物を徐々に集めて、崔さんが未経験から長年かけて作り上げた事業でした。当初は韓国人の観光客の利用だけだったのが、アジア、欧米の客層へと広がり、多い時には1日に20人以上の利用があったといいます。
「楽しい屋」を営む一方で、崔さんは5年前から韓国発のスイーツお店を大阪生野コリアンタウン(大阪市生野区)に構え、さらに数年前からは大阪生野コリアンタウンの理事を務め、商店街の活性化にも尽力してこられました。
「いずれは日本の着物と韓国のチマチョゴリ、韓国の書籍などを置いて、日本人と韓国人が相互に文化交流できるサロンを運営したいという夢を持っていたのですが、長年かけて集めてきた韓国の書籍、日本の着物などが全て失われてしまい、とても悔しいです」(崔さん)。
崔さんは、これから大阪生野コリアンタウンのお店を拠点に、ビジネスの再興を目指していかれます。「今回のことで、近隣の商店や住民のみなさんにも、力出して、落ち込んだらあかんで、と声をかけていただき、たくさんの励ましをいただきました。商店街のアーケード越しに通天閣が見渡せる風景が大好きで、私の故郷といえる場所だと思っています」とも話しておられました。
閉業した「楽しい屋」はこちら↓